2026年9月19日(土)15:00より、大牟田商工会議所3階ホールにて「大牟田アーバンデザイン作戦会議(第10回TAKIBEE特別編)」を開催しました。
今回のテーマは「大牟田のアーバンデザインを考える」。
当日は24名の方に参加していただき、これまでのTAKIBEEのように、参加者同士が語り合うだけでなく、専門家や地域で活動する人、学生など、さまざまな立場の人が一緒になって、大牟田のこれからのまちの姿を考える「作戦会議」として開催しました。
そして、作戦会議で生まれた気づきやアイデアを持ち寄りながら、夜は懇親会へ。
「考える時間」と「語り合う時間」の両方を通して、大牟田のこれからを考える一日となりました。


まずは、UDCおおむたセンター長・正木哲氏から今回の趣旨と、「アーバンデザインとは」を、原点を見直すことから語られ、作戦会議がスタート。
九州大学教授・黒瀬武史氏をお迎えし、UDCおおむたセンター長・正木哲氏と「アーバンデザインの原則」を題材に、大牟田のまちの魅力や課題、これからのまちづくりの対談へと続いてまいりました。


〇「大きく変える」のではなく、「小さく試してみる」
黒瀬先生からは、これからのアーバンデザインを考えるヒントとして、カナダ・トロントの事例が紹介されました。
トロントでは、高速道路がまちを分断するように走っており、かつては「なくしてしまうべきではないか」という議論が長く続いていました。
しかし、高速道路をなくすには大規模な工事が必要で、議論を重ねてもなかなか結論が出ませんでした。
そこで生まれたのが、高速道路そのものを大きく変えるのではなく、その一部を使ってみるという発想です。
高架下の数百メートルほどの空間を、人が歩いたり、子どもが遊んだり、ローラースケートを楽しんだり、イベントを開催したりできる場所として整備。既存のインフラをなくすのではなく、「今あるものを、今の時代の暮らしに合わせてどう使い直すか」を試していきました。
そこには、最初から完成形を決めるのではなく、まず小さく実験してみるという考え方があります。
やってみて良ければ広げる。うまくいかなければやり方を変える。
こうした「小さく始める」アプローチは、人口減少や既存ストックの活用が求められる大牟田にとっても、大きなヒントになります。
黒瀬先生からは、アーバンデザインを「大きな計画をつくること」だけで捉えるのではなく、すでにある場所や仕組みを少しずつ編集しながら、実際の活動を通してまちを変えていくことの重要性が示されました。


〇「小さな動き」から、まちを変えていく
続いて紹介されたのが、静岡市の「人宿町」の事例です。
人宿町では、地元の業者さんが中心となり、古い建物を一つひとつリノベーション。近隣地域で人気のある店などを呼び込みながら、小さな店舗や活動を沿道に増やし、エリア全体の魅力を少しずつ高めています。
特徴的なのは、行政が最初に大きな計画を描いて街をつくるのではなく、「すでに頑張っている民間の動きを行政が後から支えている」こと。
人が集まり、歩く人が増えてきた場所では、歩道を広げたり、車の速度を抑える実証実験を行ったりと、実際の変化を見ながら環境を整えています。
黒瀬先生は、このような「部分から始める」アプローチについて、すべてを一度に完成させるのではなく、まず小さく試してみることの大切さを紹介しました。
トロントの事例が「大きな都市の課題に対して、まず一部分で実験してみる」方法だとすれば、人宿町は「地域の中で生まれた小さな活動を、行政が後押ししながら広げていく」方法。
どちらにも共通するのは、「最初からまち全体を完成させようとするのではなく、すでにある場所や人の動きを起点に、少しずつ変化を積み重ねていくこと」です。


〇大牟田にも、すでに「小さな動き」がある
では、大牟田ではどうでしょうか。
対談では、空き家を活用した拠点づくりや、駅周辺でのイベント、DIYによる場所の再生など、大牟田ですでに始まっているさまざまな活動にも触れました。
こうした取り組みは、必ずしも「まちづくりをしよう」という大きな目的から始まったものではありません。
「ここを使ってみたい」、「もっと面白くできるんじゃないか」
そんな小さな想いが、実際の活動につながっています。
大牟田には、すでにまちを動かしている人や場所があります。
大切なのは、それらをつなぎ、次の動きを生み出していくことなのかもしれません。
〇「やってみたい」から始まるまちづくり
続いて、大牟田わかもの会議 副代表の田中陽菜さんを交え、若者の視点から大牟田のまちづくりについて対談しました。
田中さんからは、大牟田わかもの会議が大切にしている「自分の街は自分でつくる」という考え方や、「こんなことをやってみたい」という一人ひとりの思いを起点に、イベントや空き家活用、駅前での活動などを実践してきたことが紹介されました。
一方で、やりたいことがあっても、相談先や技術、資金、制度が分からず、アイデアが実現しないこともあります。
これを受け黒瀬先生からは、すべてを一つの大きな計画にまとめるのではなく、「小さな『やってみたい』を支える場所や仕組みをつくり、そこから活動を育てていくこと」の大切さが語られました。
「完成してから使う」のではなく、「使いながら一緒につくっていく」。
そんなこれからのまちづくりのあり方を共有し、参加者それぞれが大牟田の未来を考えるグループワークへと移りました。


~大牟田、意外といいぞ~
グループワークでは、「大牟田のアーバンデザインで大切にしたいこと」をテーマに意見を交わしました。
福岡・天神へのアクセスや自然、ものづくり、暮らしやすさなど、住んでいるからこそ気づきにくい大牟田の魅力を、もっと外に伝えていくこと。
一方で、駅からまちなかへの「入口」が分かりにくいという声もあり、サインやアート、カフェなどを通して、まちの魅力を感じられる仕掛けについても意見が出ました。
~「やってみたい」を応援する~
若者のアイデアを、企業や行政の持つ技術・場所・制度などとつなぎ、「まずやってみる」ことを後押しする仕組みも必要です。
大きな事業だけでなく、小さな助成や相談の場など、一人ひとりの「やってみたい」を実現できる環境が、まちの新しい動きにつながります。
~大牟田らしい「余白」をつくる~
祭りやDIYなど、自分たちで場所や活動をつくる文化も大牟田の魅力の一つ。
そして、まちづくりに関わる人だけでなく、子育て世代や転入者など、普段こうした活動に参加しない人にとっても暮らしやすいまちであることが大切です。
「自分も何かやってみたい」と思える余白と、誰もが心地よく暮らせる環境。
そんな視点から、大牟田のこれからについて意見を深めることができ、作戦会議は閉会となりました。




〇懇親会 第10回TAKIBEE
作戦会議の後は、大牟田駅東口の「カタルバオセロ」に場所を移し、懇親会(第10回TAKIBEE)を開催し、食事やお酒を囲みながら、会場ではさらに自由な意見交換が続きました。
立場や世代を越えて話すことで、会議の中では出てこなかったアイデアや、新しいつながりも生まれました。


~学生インターンから見た「大牟田のまちづくり」~
10回目の節目となる今回のTAKIBEEのくべり手は、UDC OMT.で一緒に活動した学生インターンの松尾君から、1年間の活動報告をしてもらいました。
一つは、大牟田市の自転車駐車場について、他自治体の事例を調査した研究。
もう一つは、学生を中心とした「まちづくりサポーターズ」の活動についてです。
サポーターズについては、単に情報を受け取るだけではなく、若者が「やってみたい」と思ったことを実際に試せる場へ変えていくことが必要なのではないか、という提案がありました。
大きなアイデアを小さな行動に分解し、人や場所、情報をつなぎながら「まずやってみる」。
今回の作戦会議で話されたテーマとも重なる内容でした。
そして自身も、1年間の活動を通してまちづくりへの見方が変わったと振り返りました。
以前は、まちづくりは行政や専門家、一部の積極的な人が担うものだと思っていた。
しかし、大牟田で活動する中で、「住んでいる一人ひとりが、まちのプレイヤーになれる」ということに気づいたといいます。
イベントやプロジェクトだけではなく、日々の暮らしの中で「ここをこうしたい」と思うことも、まちを変えるきっかけになります。と語ってくれ、楽しいくべりタイムとなりました。


TAKIBEEが大切にしているのは、こうした「話して終わり」にしない時間。
人と人がつながり、次の「やってみたい」が生まれる場として、今回も多くの交流が生まれました。
〇「これで終わり」にしない
今回の作戦会議では、さまざまな意見をもとに、大牟田のアーバンデザインを考えるための視点を共有しました。
しかし、ここで終わりではありません。
現在検討しているアーバンデザインの原則についても、今回の意見を反映しながらさらに整理し、改めて大牟田わかもの会議や今回の参加者の皆さんに見てもらい、意見を聞き「意見を集めて終わり」ではなく、その後どう反映されたのかを返しながら、何度も対話を重ねていく。
今回のTAKIBEEで共有されたのは、完成された答えではなく、「これから大牟田のまちを一緒につくっていくための『次の一歩』」でした。
大きな都市計画だけではなく、空き家、駅前、広場、イベント、DIY、若者の活動。
まちのあちこちで生まれている小さな「やってみたい」を見つけ、支え、つないでいく。
一つひとつの動きがすぐに大きな変化につながらなくても、そこから新しい人が関わり、新しい活動が生まれていく。
今回の「大牟田アーバンデザイン作戦会議(第10回TAKIBEE特別編)」は、そんな「部分から始めるまちづくり」について、参加者の皆さんと考える時間となりました。
これからもUDCおおむたは、まちの中にある小さな声や動きを大切にしながら、人と人、活動と場所をつなぎ、大牟田の次の一歩をともにつくっていきます。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

